新型コロナウイルス感染症対策新型コロナウイルス感染症対策

AI等技術を活用したシミュレーション開発 5つのリサーチクエスチョン(研究領域) AI等技術を活用したシミュレーション開発 5つのリサーチクエスチョン(研究領域)

1「第二波対策」として必要な「感染予測・対策の効果検証」(SIRモデルの代替となるモデルの確立)、「必要な医療リソース(病床・医療物資等)の需要予測と最適配置」

目的:新型コロナに関する感染状況の推定と感染拡大・抑制シミュレーションは、どの様な対応策を実施・解除するのか、対応策の効果予測と検証、医療リソースへの負荷予測、経済的インパクトの予測などに関連し、重要な政策立案・決定支援ツールとなる。刻一刻と新たな知見がもたらされ、動的に変化する状況に対応する感染拡大・抑制シミュレーション・システムの開発とその導入と連続的改良、ならびにこのシミュレーションを意味のあるものにするために体系的データ獲得・整備の手法と運用の確立を行う。

  • (1-1)ウイルスの感染するモード等の疫学情報、医学的情報に基づく、各種検査の精度やSARS-CoV-2に対する宿主応答の特性を反映した実検査データとの連動、各種対応策の実施状況とその効果、さらには、「高齢者施設」「医療施設」さらには、いわゆる「夜の街」などの特定の状況・業界・地域の特徴も想定し組み込むことができる、ヘテロジニアスな感染状況推定と感染拡大・抑制シミュレーションを可能とし、感染状況の評価、拡大の推定を行い、有効な対策の立案に利用する。これは、実施モニタリングに利用するリアルタイムに獲得される検査情報をもとに、モデルを随時修正を行う精度向上のプロセスを組み込む。
  • (1-2)SARS-CoV-2ウイルスの感染に関しては、ごく一部の感染者が多くの二次感染を引き起こすこと、感染者は、無症状期間も含めた一定の期間で他者に感染を引き起こすこと、同様に感染後の期間に依存してPCR検査でのウイルスRNAの検出確率や抗原検査・抗体検査の結果が変化すること、無症状感染者が相当な比率で存在すること、高齢者や基礎疾患を持った人に重症化リスクが存在すること、検証はされていないが遺伝的素因や交差免疫や過去の予防接種などの要因により宿主応答が変わる可能性があること、地域ごとに年齢構成率や政策的・社会的要因で人の動きが変化することなど時空間要素をモデルの枠組みに組み込むことができる必要がある。本質的に、不確定性が大きく特異な確率分布を内包した部分観測確率過程問題であり、その枠組みの構築には先見的な思い込みを排して望むことが期待される。複数の医科学的仮説がモデルパラメーターに影響をあたえると、同時に、シミュレーションの結果が、医科学的仮説の妥当性に関する示唆をあたることも想定される。
  • (1-3)シミュレーションのパラメータ推定ならびに検証のために、各種の体系的データの取得、整備、継続的運用、実時間アクセスが必須となる。例えば、PCR、抗体、抗原検査結果、一定の臨床情報などへの実時間またはそれに近いアクセスが必要となり、この基盤と運用体制が構築されること。また、シミュレーションなどの結果、より有望な政策オプションや検証するべき重要な仮説が提示された場合において、その検証のために一定の検査やデータへのアクセスが必要となった場合には、それを実現する枠組みの構築。
  • (1-4)シミュレーションの手法は、現実の日本を想定したRealisticなIndividual Based Modelやマルチエージェントモデル、さらにはネットワーク・ベースのモデルなどを利用することも可能であり、複数の手法の組み合わせであっても構わない。富岳などの計算資源を利用した、全人口レベルでの1:1粒度のシミュレーションも考えられるのではないか。政策の検証や政策決定に利用することを考慮して、体系的に複数のシナリオに基づく結果の比較検証が可能であることが望まれる。
  • (1-5)また、国際航空網の再開を想定すれば、一定粒度での多国間連携モデルも必要となるのではないか。また、入国する感染者の把握と感染拡大の防止体制と技術開発。
  • (1-6)SIRモデルも含め複数の数理モデルの比較・評価、さらに有効であればそれらの統合・併用を行い、政策判断の基盤となる情報を提供するシステムの開発。
  • (1-7)クラスター対策の効果の検証や、想定される規模の感染拡大に対して必要とされるリソース規模の推定や、より効果的な対策の立案に資する知見を導出できないか。さらに、これから立案される、新型コロナ感染症対策施策の効果予測とその検証等ができないか。
  • (1-8)また、効果的な対策を立案するために、強化学習や敵対的生成手法を利用して効果的対策の仮説を導出できないか。

2「分野別ガイドラインの進化」のために必要な「室内気流シミュレーション」、「飛沫の見える化」

目的:感染防止のためのガイドライン策定、オフイスや商業施設、公共空間等におけるウイルス飛散状況のシミュレーションとその検証を可能とし、効果的な感染防御対策の実施を可能とする一連の研究開発と実装展開

  • (2-1)感染防止のためのガイドラインが業界別に作成されつつあり、客と客の間にアクリルのついたての設置、マスクやフェイスガードの装着、換気、エアコンの気流制御等の対応が盛り込まれている。特に多くの人が集まるライブハウス、劇場等、それぞれの環境等を模擬し、無発声時、発声時、大きな声での発声時、歌唱時などで感染リスクの違いや感染リスク低減方法を提示できないか。施設内での気流などをシミュレーションし、換気などの影響を評価できないか。これらの知見をガイドラインや個別施設の感染防止策に反映させることを期待。
  • (2-2)脆弱性をもつ人々が集まっている高齢者施設や医療機関での感染防御が重要であり, それらの環境における感染防御策を提示できないか。
  • (2-3)また、一般社会(野外・屋内の人込み、電車内)での感染リスクやマスクの効果についても評価できるモデルの作成と評価できないか。
  • (2-4)実際にウイルスを含んだ飛沫などの飛散や物質表面に付着したウイルスをLIDAR等を活用し実測すること可能とし、シミュレーションのキャリブレーション、ウイルスを含む粒子の実時間トラッキング等ができないか。
  • (2-5)さらに、無症状感染者を含む新型コロナウイルス感染者から放出されるウイルスを含んだ飛沫を即時に測定・可視化することはできないか。

3「検査効率化・信頼性向上」に必要な「PCR、抗体検査等の効果的組合せ」

目的:目的:SARS-CoV-2感染に対する宿主の免疫系の応答の理解、さらには、国内外における感染状況に関するモニタリングを可能とし、感染防御対応策の効果の比較や国際的な人的移動の影響の予測と検証を可能とする信頼できる標準検査手順の確立ならびに、それらデータの共有を可能とすること。

  • (3-1)PCR検査、抗原検査、抗体検査などに係る感染状況に関わる検査体系の国際標準化。この際には、免疫機構の複雑さとSARS-CoV-2固有の宿主応答を考慮し、抗体検査に置いても従来見られるIgMやIgGのみならず交差免疫に関わる状況の理解につながるCD4+T細胞とCD8+ T細胞のSARS-CoV-2関連エピトープへの応答性に関わる検査なども含めた網羅的なものとできないか。
  • (3-2)またIgMによる測定能力、精度に関する国際比較。国際的標準データモデルの確立ができないか。国家計量機関による標準物質供給ができないか。科学的根拠に基づく精度管理の方法論の確立。感染研、AMEDとの連携が重要。
  • (3-3)PCR検査、抗原検査、抗体検査などに係る特性(偽陽性、偽陰性率、必要時間、検査体制等)を踏まえて、様々な感染状況に対する検査体系の最適化分析を行うことで、効率化ならびにより戦略的な検査方針の策定に貢献できないか。
  • (3-4)PCR検査陽性者の検体から、可能な限りウイルスの遺伝子解析を行い、どのウイルス株が広がっているのか、新たな変異の状況のモニタリングを行い、感染状況の検証や患者への対処方法へと利用できないか。

4「接触機会低減」のための「ICT、IoTの活用」(ウェアラブル機器を用いて接触回避などを行う)

目的:日常生活において、ハイリスクな接触機会を低減する方策を効果的な実施とデータに基づく効果検証を可能とする一連の技術の開発と展開、さらには、ウイルスの飛散状況の即時の可視化と不活性化の実現。

  • (4-1)顔認証技術を利用しマスク使用・不使用を自動検知し適切な利用を促すことができないか。
  • (4-2)さらに、マスク使用率を測定し、マスクの使用状況と感染確率の統計有意性を検証し、さらに、有意性が見られる場合には、マスク利用の実時間データから感染拡大・抑制の予測を行うことができないか。
  • (4-3)無症状感染者などが予告なしに来院することなどによる医療機関の院内感染や高齢者施設での感染を防御する手法は開発できないか。
  • (4-4)スポーツ観戦やコンサート、レストランなどの場で接触アプリを活用した濃厚接触率や感染低減の検証。
  • (4-5)接触アプリ利用者層と非利用者層の感染リスク比較。
  • (4-6)ロボット等による効果的な接触低減手法の実装・展開はできないか。
  • (4-7)レーザー、紫外線、画像処理などを複合した感染防御デバイスの開発はできないか。

5「早期検知と重症化回避」のための「CTスキャン画像分析」、軽症者等のモニタリング、重症化リスク予測、ウイルス変異の影響の理解 等

目的:COVID-19の早期終息にむけた感染防御、ワクチン開発、治療法の開発に必要な生物学的な知見の加速度的な獲得、スーパースプレッダーや重症化リスクのある患者など重点的に迅速同定する必要のある感染者の発見手法の研究開発を行う。さらには、今後予想される新興感染症に対するシスティマティクな臨床研究基盤を迅速に構築する。さらに、SARS-CoV-2の変異による感染性や病原性の変化、さらにはそれらの変化がワクチンや治療薬の開発に及ぼす影響の理解を促進し、予防・治療方法の開発に貢献する。さらに、今後想定される新興ウイルスに関しても応用可能な手法を確立する。

  • (5-1)ICT等を活用し新興感染症の発生を早期に検知、そのリスクをアセスメントする方策。
  • (5-2)コロナ感染症は発症の二日前から人に感染させることが知られており、リスクアセスの観点から発症前の段階で感染を検知する手法探索ができないか。保健所との連携が必要。
  • (5-3)コロナ感染症は5人中4人は人に感染させることがなく、ごく一部の感染者が多数の二次感染者を発生させるが、こうした二次感染を起こしやすい人を検知する手法探索ができないか。
  • (5-4)重症化する人とそうではない人の同定方法の探索ができないか。また、退院後の経過が順調ではない可能性のある患者の同定ができないか。これは、血液マーカーの探索や遺伝的背景など多因子に関わることが想定される。検体血液のオミックス解析等により、重症化マーカーを探索することができないか。さらには、遺伝子多型、H L Aハプロタイプ、CD4+T細胞と CD8+ T細胞のSARS-CoV-2関連エピトープへの応答性なども含めた総合的リスク解析として確立できないか。さらに、軽症者のリアルタイムモニタリング体制を構築し、そのデータと連動させて、急変リスクを減ずることはできないか。臨床医との連携が必要であり、全国的に統一のプロトコルと体制を構築することが重要。
  • (5-5)COVID-19の統合的病態をデータに基づいて解析し全体像を明らかにすることはできないか。急性呼吸器障害(ARDS)の側面と同時に、全身性血管障害症候群ともいえる病態が疑われるが、統合的な臨床データから、新たな知見と治療方針が見出せないか。
  • (5-6)SARS-CoV-2は、変異を続けており、その中には感染性や病原性に影響を与える変異が出現することも想定される。また、これらの変異が、ワクチン開発や治療法、さらにはハイリスクグループの評価に影響を与える可能性も排除できない。これらの疑問を解明するために、バイオ・インフォマティクスを活用したホスト・レスポンス解析ができないか。
  • (5-7)ウイルスは変異し続けており、ウイルスの変異が感染症にどのように影響するかリスクアセスメントを行う観点から、ウイルスが生体内に入った際の反応(レスポンス)とその制御手法(治療介入)を、分子生物学的手法、バイオ・インフォマティクスやシステム生物学、さらにはA I技術利用した大規模データ解析も活用し分析・解析できないか。
  • (5-8)この際に、今後のパンデミック対策を念頭に、SARS-CoV-2のみならずより広範なコロナウイルスやその他の必要なウイルスにも適用可能な手法の開発も行えないか。